トライアンフ東京

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Rider’s Story 【along the river】

山間を川が流れている。

黒いオートバイが、岸辺の国道を上流に向けて走っている。

ライダーは、もう若いとは言い難い年齢の男性だ。

昼食にはまだ早い、中途半端な時間帯。

交通量の多い対向車線に対し、彼の前方に車両の影はない。

知らず知らずのうちに彼のペースは上がり、やがて一台のトラックに追いついた。

彼は、法定速度を少し下回るまでスロットルをゆるめた。

 

センターラインは白だ。

このトラックさえ追い超せば、再び前方はクリアになる。

タイミングをうかがっていた彼は、対向車が途切れた瞬間に追い越しをかけた。

その直後、前方のトラックが猛然と加速した。

ほんの少し無理をすれば、それでも追い越すことはできただろう。

だが彼は自重して、次の機会を待った。

 

川に沿ってカーブを繰り返す国道。

しかし、ふと前方に平野が広がり、遠くまで見渡せる直線に出た。

ここなら難なくトラックをパスできる。

しかしあろうことか、ウインカーを灯し追い越そうとするオートバイを右のドアミラーに認めたトラックのドライバーは、対向車線に車体をはみ出させて追い越しを阻止した。

ライダーは怒りの感情を覚えたものの、やむなく元の車線に戻った。

クラクションを鳴らすことを思いとどまるのが精いっぱいだった彼は、ふとヘルメットのシールドを開けて空を見上げた。

 

いい天気だ。

風の中に、秋の気配を感じた。

追い越しをあきらめた彼はトラックとの車間距離をあけ、川沿いの景色を眺めながらのんびり走ることに決めた。

 

その時だった。

前方左側の路側帯に立つふたりの警察官が視界に飛び込んできた。

手には赤色誘導棒と「止まれ」と書かれた赤いフラッグ。

速度取り締まり、いわゆる「ネズミ捕り」だ。

法定速度以下で走るトラックとオートバイは、当然そのまま通り過ぎた。

間もなくそれぞれのバックミラーから警察官が消えて、短い直線に差し掛かった。

トラックのドライバーは左のウインカーを点滅させるとともに、窓から右手を出してライダーに先行を促した。

単独走行だったら、間違いなく今頃…。

一瞬にしてトラックを追い越したライダーはすべてを悟り、左腕を上げてドライバーに合図を送った。

サンキュー。

メーターの針は法定速度をほんの少しだけ超えた数字を指し

ミラーに映るトラックはゆっくりと小さくなっていき

やがて見えなくなった。

 

 

 

 

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